(草野延孝評)
春
3月~5月と言っても3月と5月とでは大違い。3月頃は丹沢の1200m以上の高度では時折50~60センチ以上のドカ雪になる事も珍しくありません。3月一杯はまだ冬と考えた方が良いと思います。4月になってから降雪はぐっと減ってかなり春らしくなって来ますが、それでも4月15日頃で20センチ位の雪になった例もあります。
500~600mの所は4月初めから新緑が楽しめます。1000m以上の所は4月下旬から5月の初めの頃、ヤマザクラの開花となりブナの新緑はそれ以降です。ミツバツツジが咲き出すのが4月中旬頃からで5月に入ってからトウゴクミツバツツジが咲き出して5月中旬頃がツツジの見頃です。
春で天気が期待出来るのもゴールデンウィーク過ぎくらいから5月一杯で春の天気は不安定な天気も少なくありません。
近年、温暖化が進み、新緑や花の開花時期が今までより一週間~10日早まる傾向あります。
夏
6月に入ると入梅となって来ます。新緑から緑一面濃い緑に包まれてきます。梅雨の時期でも時々天気に恵まれる事もあります。又、暖かくなる時期で雨に濡れてもそれ程寒くないので雨の中で緑を楽しみながら歩くのも一興かと思います。鍋割山頂付近のニシキウツギがこの頃良く咲いています。
6月から7月にかけては梅雨の中休みで晴れると真夏の暑さとなり登りは汗ダクダクになってしまいますので水分は十分確保すべきでしょう。
7月15日~7月末この時期に丹沢の700~800m以上の高度の所にはかなり広い範囲でヒメボタルが発生します。夏の夜に鮮明な光を点滅させる様は神秘的です。特に梅雨明けで一気に猛暑になると一斉にホタルが飛び交うようです。ヒメボタルの詳しい説明は別の欄にて詳しく紹介します。
梅雨明け後の暑さは夏山登山の大敵で中には脱水状態になって体調を崩した人も居ます。98年7月初めに一人の男性が倒れて死亡と言う事故もおきています。いくら暑い夏と言っても夜は18~20度位まで下がりますので山小屋の一夜は平地での熱帯夜に較べればとても快適です。ただ、アブが多いのは気がかりです。
夏から初秋の頃にかけて一番気をつけなくてはいけないのは台風や集中豪雨です。一日で300~400ミリも降るような豪雨は勘七沢、本沢を地獄のような濁流と化し渡歩不能となってしまいますから要注意です。
夏の終わり頃にはかってはテンニンソウの花が咲き乱れススキが穂を出しましたが最近では両方とも酸性雨やシカの食害で極端に減ってしまい、見れなくなりました。
☆ヤマユリについて
県花であるヤマユリは夏の丹沢の代表格で大輪の花は見栄えがします。7月半ば過ぎから8月初めにかけて比較的標高の低い800~900m以下の所に良く見かけます。これもシカの食害で減っており、かろうじて急斜面などにわずかに残っている状態です。
秋
鍋割山はかって三の萱(さんのかや)と呼ばれススキの名所でした。戦後、昭和30年頃までは山里の人がわざわざ屋根をふくためのカヤを一のカヤ、二のカヤ、三のカヤまで毎年採取に来てたようです。98年度は9月になっても殆どススキの穂が見られず山の様相がすっかり変わってしまいました。
9月と言えば一年中で最も降雨量の多い月でせっかく登山計画しても台風や大雨で流れてしまう事が多いようです。丹沢が原産地である希少植物サガミジョウロウホトトギスが人知れず谷間に美しい黄色の花をさかせるのが9月初めです。最近は8月下旬に咲き出すようです。
9月も半ばを過ぎるとブナ林や雑木林にキノコが出始めます。最近ではキノコ採取者が増えたせいかキノコがぐっと減って来たように思えます。9月半ばから10月半ば頃までは秋雨前線や台風の影響が多いので気象情報に注意して山に登るべきです。
10月半ばを過ぎると絶好の登山時期となってきます。キノコ鍋を食べる会も10月第2週土曜日で賑わいをみせます。毒キノコも結構あるので知らないキノコにはお手はだしても口を出さない方が賢明です。
10月下旬から紅葉が始まります。紅葉は一番高い所又は北側斜面から色づいて来ます。山の上から中腹まで約一ヶ月位紅葉を楽しむ事が出来ます。
標高の高い稜線の落葉樹は台風などの強風で葉をちぎられてしまう事が多く、美しい紅葉になるのはむずかしいようです。一段下がった中腹や渓谷沿いに美しい紅葉が見られます。11月半ばぐらいが目やすです。
11月になりますと初霜や初氷のたよりが届くようになります。天気が悪い日は真冬の寒さを味わう事も珍しくありません。天気はずっと良くなる事が多くなり乾燥してきます。ただ、夕暮れが早く、4時半にはもう日没で油断していると真っ暗な山を下山するようになるのでヘッドランプや明かりは必携です。夕焼けが最も美しいのもこの時期です。5時前には下山してしまうよう計画すべきです。
☆太陽が富士山のてっぺんに沈む日が一年の内に2度あります。
秋は10月16日、冬は2月25日。塔ノ岳山頂と鍋割山頂とでは2日位のずれがあります。
冬
山の冬はすごく早く訪れます。へたすると10月半ばにもう雪が降る事さえあります。12月は割に天気が安定し雪が降ることは少ないものの油断すると思いかけず20~30センチもの雪が積もったと言う例もあります。山の景色を眺めるには一番良い時期でしょう。丹沢とは言え防寒対策アイゼンの携帯は怠るべからずです。年末まで降雪量があまりない事が多い様です。年が明けるといつ雪が降ってもおかしくない状態になります。霧氷も霧がたちこめて気温が上がらない状態で一面に花を咲かせたように着く事があります。天気の良い時や冷え込みの厳しい時には殆ど見られずさえない天気で山が見えず肌寒さが日中続くような日に思いかけず綺麗に着く事が多いようです。
1月中は降雪量は少なく冬晴れた日が多いのですが98年度は30年に一度と言う1m以上の大雪が一晩で降りましたので油断出来ません。この時期の登山には必ず軽アイゼンやロングスパッツやヤッケ、防寒服、オーバーズボン等は必携です。最も冷える時で-12~-13度位です。まれに-15度以下になる事もあります。
日当たりの良い南面の登山コースは降雪しても2~3日でかなり解けてしまいますが、北面や西面の日当たりの悪い斜面は想像以上に雪が残っていたりしますのでコースの選び方で相応の準備をすべきです。
2月~3月になりますと天気が不安定になり雨が降ったり大雪が降ったりするので気象予報をよく聞いて山へ登るべきです。時に積雪が1~2mも残っていると言う事もあります。特に、塔ノ岳から丹沢山、蛭ヶ岳方面に向かわれる場合はかなりの雪を覚悟して向かうべきでしょう。雪を求めて山へ登る人にとっては願ってもない時期かも知れません。